牧師が見つめた性的な悩みの世界。公では語られない性的な場に「救い」があるとしたら…【沼田和也】
弱音をはく練習〜悩みをため込まない生き方のすすめ
■傾聴はときに残酷な側面も
女性たちからすれば、ずいぶん勝手なことを言っていると思われるかもしれない。だが、これは男性に限った問題ではない。男性とはまた異なるかたちで、わたしは女性の語り手たちにも出遭った。
ある女性はホストに夢中になっていた。別の女性は何人もの男性と身体を重ねては「この男もだめか」と絶望に打ちひしがれていた。わたしは彼女たちもまた、言葉ではなく身体そのものを傾聴してもらいたかったのだと思っている。身体そのもの。自分がこの世に存在しているという事実そのものを、性を通して受け止めてもらいたい。やさしげな言葉だけでは一生満たすことのできないものを、彼女たちはおのが肉において渇き求めているのだ。
このような現実を前にしたとき、シスターではないけれども、わたしは自分の限界を突きつけられる。傾聴はときに残酷な側面を持つ。わたしは相手の話を聴く。ひたすら聴く。しかし、わたしのことは話さない。相手は夢中で話すので、ときには自分のすべてをさらけ出そうとする。一方でわたしは自分を制御しており、話すことと、話さないこととを冷静に選択している。こうして、わたしと相手とのあいだに圧倒的な非対称が形成される。自身のことには一切言及しないわたしと、おのれの臓腑さえわたしに受け取ってもらいたい語り手と。
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沼田和也著 最新刊 2023年6月13日発売
『弱音をはく練習 〜悩みをため込まない生き方のすすめ』
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目次
序章 弱音をはく練習
弱音をはく練習が足りていないあなたへ
第1章 自分で自分を追いつめないために
「もうこれ以上は無理です」
生きていく意味が分からなくなったとき
第2章 生きづらさの正体を知るために
ある日突然、学校に行けなくなった
ひきこもりだった当事者が語れること
生きづらさの原因は「心」?
第3章 嫉妬心で苦しまないために
コンプレックスを手放さないという選択
他人と比べて嫉妬に苛まれるとき
他人を羨み、悔しくて仕方がないとき
第4章 人間関係を結び直すために
人間関係に疲れきってしまったとき
ため息一つを共有してもらえたなら……
S N S 時代は「別れる」ことが容易でない
第5章 憎しみに支配されないために
怒りや憎しみを無理に手放さなくてもいい
対人トラブルを起こしてしまいがちな人の共通点
「我が子をどうしても愛せない」と慟哭する女性
D V 被害者が虐待を繰り返されないために
第6章 性的な悩みに苦しまないために
「不倫をする人」を断罪しても仕方がない理由
性的な悩みは公の場では語られない
「わたしは男/ 女です」と言いきれない人からの手紙
「よけいなお世話」によって救われてきた経験
第7章 理不尽な社会を生きるために
リストラ・ハラスメントに誰もが遭遇する時代
この苦しみは他人のせいか? 自分のせいか?
死にたくなるほどお金に困っているとき
第8章 孤独な自分を見捨てないために
なぜよりによってわたしが苦しむのか?
子どもの頃によく見た「死刑の夢」
無駄で面倒なことに、幸せは宿っている
「自分自身の物語」をつくり、その読者になる
第9章 他人と痛みを分かちあうために
「ずるい」という想いを認めることから
人は何歳からおじさんやおばさんになるのだろう?
不純な動機で善行をするのはだめ?
終章 弱音をはきながら生きる
他人を妬む気持ちはなくならない